ゼミナールについて


最終更新 : 2023/12/13 11:46:33

 

ゼミナールについて

 

1:研究室の概要

 妹尾研究室は、経済学の研究室です。

 授業でも申し上げていることですが、一口に「経済学」と言っても、分野は多岐にわたっており、大きく分けても理論・歴史・応用という三つの領域があります。

 「理論」とは、経済理論のことで、ミクロ経済学やマクロ経済学、社会経済学などがこれに該当します。「歴史」とは、経済史のことで、西洋経済史、東洋経済史、日本経済史などが該当します。「応用」には、財政学、金融論、国際経済学、労働経済学、環境経済学、開発経済学、社会政策論・・・etc.といった分野が含まれます。これらは通常、すべて別々の研究者によって研究・教育されています。経済学にはきわめて多様な分野と、複数の方法論がある、ということになります。

 妹尾は、発展途上国(開発途上国)が抱えている諸問題(例えば、貧困や内戦など)を、世界経済・世界政治の構造と関連づけながら検討することを、課題としてきました。また途上国の経済発展を左右する一次産品についても、世界経済との関わりのなかで検討してきました。したがって、「応用」の一部である「国際経済学」と「開発経済学」を専門としている、ということになります。ただし、研究対象との関連上、国際関係論(国際政治学)や平和学などとも接点がありますし、(経済学に限定される)「開発経済学」よりも(経済学に限定されない)「開発学」という呼称を好んでいます。『学際的にやっています』と言えば、わかってもらえるでしょうか?

 

 

2:ゼミの紹介 & 入ゼミにあたっての基本的なお願い

(1)教員の専門は上記のとおりですから、ゼミでは、広い意味での国際経済・開発経済に関する文献を輪読することが割と多いのですが、常にこうした文献だけを取り上げてきたわけではなく、年度によってはこうした枠に収まらない文献も輪読してきました。卒論についても、国際経済・開発経済に関するテーマ以外でも、経済に関するテーマであれば可としています。また、国際関係論(国際政治学)および平和学に関するテーマで卒論を書くことも、原則として可としています。

 前期は文献の輪読、後期はゼミ生の個別報告(4年生は卒論中間報告、3年生は卒論のテーマ探し)という形で、ゼミを行なうのが基本的な形です。過去に輪読した文献は以下の通りです。

2023年度:鳥集徹(2015)『新薬の罠:子宮頸がん、認知症…10兆円の闇』文藝春秋本田由紀(2021)『「日本」ってどんな国?:国際比較データで社会が見えてくる』

2022年度:柴田努・新井大輔・森原康仁編(2019)『新版 図説経済の論点』旬報社

(20年度、21年度は、不開講)

2019年度:リチャード・ボールドウィン(2018)『世界経済大いなる収斂:ITがもたらす新次元のグローバリゼーション』日本経済新聞出版社

2018年度:西島章次・久保広正編(2012)『現代の世界経済と日本』ミネルヴァ書房

2017年度:黒崎卓・栗田匡相(2016)『ストーリーで学ぶ開発経済学:途上国の暮らしを考える』有斐閣

2016年度:柴田努・新井大輔・森原康仁編(2015)『図説経済の論点』旬報社、ほか

2015年度:ラジ・パテル(2010)『肥満と飢餓:世界フード・ビジネスの不幸のシステム』作品社

(2014年度は、教員のサバティカル研修のため、不開講)

2013年度:ロバート・C・アレン(2012)『なぜ豊かな国と貧しい国が生まれたのか』NTT出版

2012年度:大泉啓一郎(2011)『消費するアジア:新興国市場の可能性と不安』中央公論新社

2011年度:舩田クラーセンさやか編(2010)『アフリカ学入門:ポップカルチャーから政治経済まで』明石書店

2010年度:丸川知雄(2009)『「中国なし」で生活できるか:貿易から読み解く日中関係の真実』PHP研究所

2009年度:ジェレミー・シーブルック(2005)『世界の貧困』青土社

2008年度:大塚茂・松原豊彦編(2004)『現代の食とアグリビジネス』有斐閣

2007年度:丸川知雄(2007)『現代中国の産業』中央公論新社、ほか

(2)入ゼミにあたっては、「経済学概論」の単位を取得しておくことを、最低限の要件とします。また「国際経済学」、「経済学特講」などの妹尾担当の他科目についても、単位を取得していない場合は、ゼミと平行して受講して欲しいと思います。

(3)ゼミは水曜日の5時間目に行なっています。ただし、90分では終わらず、若干延長することが多いです。また、ゼミの後に、卒論の相談・指導や、コンパを行なうこともあります。したがって、水曜日については、時間にかかわらず、アルバイト等の予定を入れないほうがよいでしょう。

(4)かつては、ゼミ活動の一環として、経済施設(工場等)の見学を日帰りで実施してきました(過去の見学先は、下記を参照)。また、4年生には、夏休みの途中に大学に来て、卒論の中間報告をしてもらってきました(日程については、貴重な夏休みの妨げとならないよう、ゼミ生と相談して決定)。ただし、これらは近年は休止中です。

2013年度:東京ガス袖ヶ浦工場  見学模様

2012年度:東京証券取引所  見学模様

2011年度:造幣局(東京)  見学模様

2010年度:日本銀行本店  見学模様

2009年度:新日本製鐵君津製鉄所  見学模様

(5)自動車免許は、できれば3年生になる前に(遅くとも3年生の夏休み中には)取得しておくことを、強く推奨します。3年生の秋以降は、実習や教員採用試験のための準備、就職活動、卒論執筆などに時間を取られるからです。

(6)締切・約束ごとを、守ってください。メールの返信は、原則、「48時間以内」を心がけてください。

 

 

3:大学におけるゼミの意義:ゼミというのは何をするところなのか

 大学というところは、決まりきった知識を授けてもらうところでは、ありません。換言すると、高校までの「受信型」ではなく、「発信型」の勉学こそが、大学の基本です。

 自分でテーマを設定し、それについて自分で学んでいく。その途中の段階で、他人と幾度も議論しながら、考えを深めていく。この「自らが関心をもつテーマについての研究」を行ない、その成果を最終的に卒業論文として纏めていくのが、ゼミという場です。したがって、ゼミこそが、大学(特に文科系の)における勉学の中心的な場ですし、自らが関心をもつ研究テーマを持って(抱えて)ゼミに入る、というのが本来のあるべき姿です。

 ただし、現実には、「単位を取るためのお勉強」をやる人は多くても、「自らが関心をもつテーマについての研究」に積極的に取り組もうとする人は多くはないようです。

 ですから、全員に「自らが関心をもつ研究テーマを持って(抱えて)ゼミに入る」ところまでは、要求しません。ただし、3年次のうちに、卒論のテーマを決めてもらっています。「3年次のうちに」というのは比較的早いかもしれませんが、これは次のような理由によるものです。

 自分が取り組むべき卒論のテーマを決めるのは、さほど簡単ではありません。そもそも、学部生のうちは、世の中にどのような問題やテーマがあるのかさえよく知らない、というのが実情だと思います。

 そうしたなかで、授業で扱われた事項や、報道などを手がかりにして、卒論のテーマを決めたとしても、目移りしたり、行き詰ったり、これで良いのかと悩んだりすることも多いのです。途中でテーマを変えたくなることもあるでしょうし、実際に変えてしまうことも、あるかもしれません(過去のゼミ生の半数弱が、実際に途中でテーマを変えています)。

 このような試行錯誤は、誰もが、多かれ少なかれ経験するものです。また、こうした試行錯誤は有益です。ただし、この試行錯誤には、それ相応の時間を要します。他方で、卒論の締め切りは決まっていますから、4年生の後期になってなお試行錯誤している、というわけにもいきません。となると、良い卒論を書くためには、3年生のうちから試行錯誤を繰り返しておく必要があります。

 つまり、すぐれた卒論を書くためのテーマを決めるための時間は、じつは、もうそれほど多くは残されていないのです。「自らが関心をもつテーマ」を暖めてこなかった人は、いまからすぐ、アンテナを高く張って、試行錯誤をしながらのテーマ探しに注力していく必要があります。

 テーマを探すための、また広く情報収集一般に役に立つメディアについて、述べておきます。

《新聞》 必ず読んでください。記事から学べるのは当然として、広告からも、自らの卒論のテーマに関連した書籍を見つけることができるはずです。著名な学者の見解に接したり、研究上の論点などについて知ることができる場合もあります。ただし、新聞の見解を鵜呑みにしないように、批判的に読みましょう。

《テレビ》 ほとんどのテレビ番組、特に地上波のバラエティ、ドラマなどは、時間の無駄だと思います。

例外的に推奨できるもの:地上波では、日々のニュース番組として「ワールドビジネスサテライト」(テレビ東京)、特集ものとして「クローズアップ現代」(NHK)、「NHKスペシャル」(NHK)、「ガイアの夜明け」(テレビ東京)など。ハイクオリティの番組が多い衛星放送では、特集ものとして「世界のドキュメンタリー」(NHK・BS1)、「BS1スペシャル」(NHK・BS1)を推奨できます。

 いずれにしても、テレビはうっかりすると、ダラダラ見てしまいがちですので、「これぞ」というものを、「録画&CMスキップ」で見るのが良いと思います。

《雑誌》 経済を扱った一般向けの雑誌として、『週刊ダイヤモンド』、『週刊エコノミスト』、『週刊東洋経済』、『日経ビジネス』などがあります。いずれも書店で入手できます(『日経ビジネス』は、大型書店中心)。

 これらは、大学の図書館にも所蔵されています。新聞を読んでいれば、これらの広告を目にしますので、広告をみて、興味をそそられる特集や記事があれば、そのときに図書館で読めば良いと思います。なお、記事の一部はWebで読めますが、すべての記事がWebで読めるわけではない筈です。

 また、経済を学ぶ学生向けの雑誌として、『経済セミナー』というものもあります。

 次に、一般的な総合雑誌として『文藝春秋』、『世界』、『VOICE』、『中央公論』なども、大いに参考になるでしょう。会員向け情報誌の『選択』、『FACTA』なども有用です。これらもすべて、新聞に広告が出ていますから、関心のある記事があれば、書店で購入するなり大学の図書館で読むなりすれば良いでしょう。

《ネットメディア》 ビデオニュース・ドット・コムを推奨します。地上波のテレビの報道の多くが、薄っぺら極まりないということに、一刻も早く気づきましょう。無料で見られる動画があふれている時代ですが、良質の情報を手に入れるには、お金をかける必要があります。

《メルマガ》 上述の雑誌『日経ビジネス』は、各種のメールニュースを配信していますので、これらを購読することも良いでしょう。

《データベース》 過去の新聞記事などは、千葉大の図書館にあるデータベースで検索することができます。

 日頃からアンテナを張ってニュースをチェックしてください。「虫の目」「鳥の目」「魚の目」という三つの目を使い分けながら、世の中の動きを追うことが大事です。そして何よりも、ゼミ以外の場で、日常的によく本を読むことを通じて、自分が「おもしろい」と思えることを1日でも早く見つけて、仲間と議論しながら、自身の研究を深めていってください。

 どのような学問分野であっても、ゼミでの勉学を通じて、情報・資料収集力、分析力、批判力、説明力、コミュニケーション力、観察力、計画力、実行力などが身につきます。これらは、いずれも社会で生きていく上で必要不可欠な力です。実際に、企業の人事担当者を対象としたある調査によると、新卒者に求めたい能力・特性として、「対人コミュニケーション力」、「チャレンジ精神」、「主体性」が挙げられています。妹尾は、ゼミ生がこうした力を身につけて卒業できるよう、お手伝いをいたします。ちなみに、上記の調査では、「新卒者が身に付けていて当然と考える最低限のスキルや資格は何か?」という問いに対して、1番多かった答えが「Officeなどを活用したドキュメント作成スキル」、次いで「ITを活用した情報収集スキル」、3番目が「問題解決方法や事業を考える企画スキル」だったそうですが、これらも、卒論の作成を通じて高めることができます。

 

 

4:卒業論文・ゼミ論文と、進路・就職について

 各人が強く関心を惹かれる社会科学上のテーマを選び、主体的に研究を深めて、卒論を完成させて欲しいと思っています(ただし、経済教育などの、教育実践・教育方法に関するテーマは、認めません。また学部学生の卒論のテーマとして明らかに難がある場合は、適宜お伝えします)。教員から、卒論のテーマを一方的に押し付けることは、しません。また、手取り足取りしてテーマを決めさせるようなことも、しません。

 ただし、このように自主性を尊ぶ教員の指導スタイルには、合う人と合わない人とがいます。自分でテーマを見つけられない人、逐一細かく指導されないと困る(前に進めない)という人は、合わない可能性が高い。教員の専門のほかに、教員の指導スタイルと自分のタイプとの相性も考えてみて下さい。

 なお、スムーズな卒論作成のために、3年次からゼミ論文(4000字程度)を書いてもらう予定です(3年次の2月下旬に提出)。もちろん、テーマの選択・設定の相談には、随時応じます。

 ゼミ生が過去にどのようなテーマで卒論を書いたのかについては、「卒業論文要旨」をご覧下さい。

 進路・就職についてですが、妹尾は、特定の進路に進むようゼミ生を誘導することは、ありません。教員養成系学部だからといって、教員になるよう誘導したりは、しません。教員になるも良し、民間就職もよし、公務員もよし、その他でも良し、というスタンスです。

 また、妹尾は、公務員試験に出題される経済学(=新古典派経済学)を、この教育学部という場で学生さんに教え込むことには関心をもっていません。したがって、公務員試験を突破する上で役に立つゼミではまったくありませんので、そのような下心をもって入ゼミされても困りますし、お役には立てません。妹尾がゼミ生にもっとも身につけて欲しいと願っているものは、公務員試験のテストを突破する力などではなく、どのような進路と人生であっても必要になるはずの情報・資料収集力、分析力、批判力、説明力、コミュニケーション力、観察力、計画力、実行力などのほうです。この変化の激しい、不確実な時代を生き抜く「知的基礎体力」を、ゼミでの勉学を通じて、養ってもらいたいと思います。

 

 

5:その他

 いたずらにハードなゼミではありませんが、楽勝ゼミでもないと思います。「決してラクなゼミではなかったけれど、このゼミで勉強して、よかった」と卒業後にふりかえることのできるゼミを目指しています。知識量の多寡は問いませんが、やる気のある方を求めます。「あまり勉強したくない」という方には、向かないゼミです。

 「生意気」な学生を歓迎します。ここで「生意気」というのは、マスコミや知識人の言うことを鵜呑みにするのではなく、いったん立ち止まって、自分の頭でしっかり考えてみようという批判精神を持っていることで、犯罪行為に手を染めるようなことでは、ありません。

 ゼミ生の主体性に期待しています。教員そっちのけでゼミ生が勝手に勉強していく、そんなゼミが理想です。

 ゼミは、一生の交友関係を築く上での基礎となる場所ではないかと思っています。コンパは、年によっても違いますが、これまでは年に2〜3回やってきました。

 

 


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